平成29年 10月19日

今回は、社会福祉法人千葉ベタニヤホーム 国府台母子ホームの川口学様と、児童養護施設 子供の家の早川悟司様にお越しいただき、「社会的養護の現状と課題」というテーマでの講演会をしていただきました。普段目にすることの難しい、しかし非常に重要な現場の声を直接聞くことのできる、大変貴重な機会でした。

国府台母子ホームの川口様からは、母子生活支援施設そのものの概要から、利用されている母と子の状況、保護と自立に向けた支援、そして施設退所後も続く切れ目のない支援について、現状と実際の取組をお話しいただきました。

母子生活支援施設は、配偶者のない女子又はこれに準ずる事情にある女子及びその者の監護すべき児童を保護、支援する施設であり、母と子が離ればなれになるのではなく、一緒に生活をしながら危機を乗り越え、再び社会に船出していくことを支援する唯一の施設です。自立に向けた支援として、住居提供や生活の支援だけでなく、心理相談やサークル活動、地域の方々とつながるサービス等を実施しており、社会に再び戻っていく環境を様々な視点から整えていらっしゃるということが印象的でした。また、施設退所後も共に子育てのモデリングを行うことで切れ目のない支援を継続して、地域の中で「自立」をともに目指す取組をされているというお話は、今後社会的養護施設の目指していくべき視点であると感じました。

児童養護施設 子供の家の早川様からは、社会的養護の現状や背景について客観的な数値を交えた具体的な状況について、また児童支援の課題について、制度の動向や貧困の連鎖についての現状をお話しいただきました。

虐待通告への注目度があがり関心が高まっている一方で、実際は保育園の利用や親の就労状況が少しでも改善していれば予防ができたというケースも多いという話や、社会的養護を必要とする家庭の状況として、戸籍上は夫婦であっても別居している潜在的な片親世帯が非常に多いという話は、数値には見えてきづらい、まさに現場でしか得ることのできない貴重なお話でした。また、日本における「児童虐待」という言葉の在り方そのものについて言及され、ドイツでは「子どもの福祉の危機」と、主語を親ではなく子どもにおいているというお話からも、日本の「児童虐待」に対する、特定の個人の責任のように捉える社会の傾向も大きな課題であると感じました。

現場で見えてくる現状や課題だけでなく、施設関係者はもちろん社会が担っていくべき意識や今後目指していくべき社会的養護の在り方について、非常に臨場感を持って考えることのできる機会でした。

この度は、お忙しい中、このような貴重なお話を頂けましたこと感謝申し上げます。川口様、早川様、本当にありがとうございました。

3年 佐藤 恵