平成30年6月21日

日本年金機構から水島藤一郎理事長、職員の方にお越しいただき、主に機構経営についてご講演いただきました。以下講演のレポートです。

日本年金機構は平成22年1月1日に旧社会保険庁解体・分割に伴い設立された非公務員型の公法人(特殊法人)です。国(厚生労働大臣)から委任委託を受け、公的年金の適用・徴収・給付・記録管理等一連の運用業務を行い。財政責任・管理運営責任は国(厚生労働省)が負いつつ、一連の業務運営は機構が行います。

公民どちらの要素も持つ機構経営にあたり、以前大手銀行の経営にも携わってきた経験から感じる公民の違いを対比しながらお話してくださいました。
【組織の存在意義の指標と継続性】
企業など民間組織は、その存在意義ないし価値は市場が決定します。その為組織の継続性は絶対的なものではなく、市場において価値が否定されれば追い出されます。一方で公的機関は存在意義を図る指標を民間組織のように持たず、社会の要請がある限り半永久的に継続していきます。社会からの要請や評価は数値のような目に見える指標に変換しにくいため、社会にとって必要だから存在しているというどこか漠然とした存在意義を自らが認めていく他ありません。
【情報の非対称性】
民間組織は売り手と買い手の関係から、買い手側の商品情報の理解への努力がなされます。対照的に公的機関は国と国民という関係や制度の煩雑性から、与える側が与えられる側の理解への努力が二の次にされてしまうことがあります。情報の非対称性は組織内の緩みを引き起こしてしまう恐れがあり、自己監視が必要になります。
【全体と個】
民間企業は個人があって組織が成り立つのに対し、公的機関はまず組織があってそこに誰が入るかが問われます。組織の成り立ち方の違いによって生じるのは、個人の個性や個人の自分が組織の一部を背負っているという責任感の強弱やそれらの持続性です。
【前例主義】
組織への評価や組織の継続性より、組織内部を自己変革するインセンティブが働きにくい、むしろ変革はリスクと捉えられてしまいがちだそうです。
【目標と成果】
個人にとって、そして所属組織はいかなる成果を上げるべきかを検討したとき、ここにも公民で違いが出ます。民間組織は利益を上げること、一方で公的機関は貢献の見地から目標を設定すべきとされます。民間組織は明白な目標があるのに対し、公的機関は抽象的にも捉えうるため常に目標を確認していかないと見失ってしまいます。
組織的に見ても、そこに所属する個々人で見ても、自己の存在価値や意義を自身で評価し、その上で職務上の目標を立て成果を上げていくことは中々難しいことです。あくまでも一個人的な感想ですが、明白な答えがない中で、そこに組織や自分なりの答えを見つけていきながら働ける人は公的機関が向いているかもしれないし、結果が目に見えて達成度が図れる方がモチベーションを保ちながら楽しく働けるという人は民間組織に向いているかもしれないと感じました。公民組織の在り方を経営者の方の目線から対比的に学べたことで、理解が深まりました。印象に残った公民の違いをまとめてきましたが、他にも年金制度について、今日年金給付額がGDP1割を占め受給者が総人口の約3割を占めるなど、具体的な指数を用いた説明をしていただき、年金制度が身近な問題であり勉強しなければなと感じました。

まとまりのない文章で長々連ねてまいりましたが、最後にご多忙にもかかわらず貴重なお時間をいただきましたこと、感謝申し上げます。

3年 須田 琴子