今回、福島被災地視察として、福島県富岡町役場、ふたば医療センター付属病院を訪問させ て頂きました。 はじめに富岡町役場の方々から、震災直後の様子から、現在に至るまでの復興の状況を写真、 データなどを交えてご説明頂きました。大きな問題の一つとして、やはり町外へ避難し、元 住民の方々の帰町が十分には進んでいないことを挙げられていました。特に、こどものいる 家庭では、一度町外に避難すると、その避難先で新たなコミュニティを形成しており、親、 こども共に、なかなか富岡町に帰ることが難しいとのことでした。このような状況に対し、 富岡町役場としては、「特定復興再生拠点区域復興再生計画」を作り、町内学校の順次再開、 富岡産業団地(仮称)を整備し、帰還、新規問わず、企業誘致を目指すこと、帰町者、町内 居住者への助成制度の充実化、町民再会のための文化的交流の場を設けるなど、様々な活動 をされているとのことです。また町内への支援は勿論、町外、県外生活の支援をされている というお話も印象的でした。具体的には、いわき市、郡山に町外拠点をつくることで、富岡 町と情報を共有し、富岡町の各種証明書を全国各地のコンビニで発行できるシステムの構 築、福島県内の 5 か所の交流サロンを設置し、住民が集まることのできる環境を整えてい るとのことです。
この後 VR(仮想現実)により、震災被害を自分たちの目で立体的に見る、という体験をさ せていただきました。代表者一人が VR ゴーグルをつけ、見ている映像を映した画面を3D 眼鏡で見させていただきました。地震、津波により甚大な被害を受けた駅や建物の内部の映 像で、あらゆるものが散乱し、建物には自動車が突き刺ささっているといった光景を目の当 たりにし、もちろんデジタルの映像ではありますが、写真や普通の映像と違い、すさまじい 状況を身をもって感じることが出来たと思います。
続いて、ふたば医療センター附属病院に移動し、今年 4 月に開院されてから現在にいたる までの過程、今後の活動についてのお話、そして院内の見学をさせていただきました。 ふたば医療センター附属病院は救急科と内科のみを設置し、救急医療を提供する病院です。 福島県立医科大学のバックアップを受けながら、安心医療の提供をまさに0から作り上げ たとのことです。このように医療機関がある、ということは、住民の方々の安心は勿論、復 興事業従事者が安心して働くことが出来ること、ひいては企業進出にも大きな影響を与え る、復興上欠かせないことであると伺いました。また、診察や救急業務に加え、今後、在宅 診療も行うとのことです。在宅診療を地域のクリニックにまかせるのでなく、公的機関とし て行うことが大切で、これにより、より細かな医療サービスを提供するのみならず、必要な 人には入院設備を提供しつつも、病院内のベッドの稼働率向上にもつながるなど、その重要 性を学ぶことが出来ました。 お話を伺ったのちに、院内を案内していただきました。軽度の被爆をされた患者の除染を行 う除染室、救急車で搬送された患者が外から直接入ることのできる診察室。そしてバリアフ リーのトイレを完備し、きれいで普通の部屋のような雰囲気を目指して作られた病室、歩行
訓練といった、身体的リハビリは勿論、階段の上り下り、入浴といった日常生活の訓練まで 幅広く行うことのできるリハビリルームなど、充実した設備を見学させて頂きました。 通常滅多に見学することのできない、病院の中を丁寧に、詳しく説明していただき、大変興 味深かったです。 最後に、お仕事でお忙しい中、私達のために時間を割いてくださった、富岡町役場、ふたば 医療センター附属病院の関係者の皆様に深く感謝申し上げます。私達の日常では絶対に知 ることのできない実情について伺い、さらに貴重な体験、見学などをさせて頂き、大変刺激 を受けました。視察の報告、そして協力してくださった方々への感謝の意味をこめまして、 当レポートとさせていただきます。本当にありがとうございました。
早稲田大学 社会保障法

菊池ゼミ 3 年 金坂 一樹