【1日目】特別養護老人ホーム「梅の香」
福島合宿初日の最後に、特別養護老人ホーム「梅の香」を訪問し、施設長の大内さんからお話を伺いました。

大内さんからは、社会福祉法人南相馬福祉会を中心とした、相馬地方の介護に関する問題について、お話をしていただきました。
2011年3月11日、東日本大震災発生後、梅の香の職員は、津波を避けるため利用者を連れて一時避難。翌日、自施設に戻りましたが、原発事故の避難指示圏内に指定されたため、利用者を含めた避難は非常に難しく、梅の香の職員と利用者は施設に取り残された状態でした。同月16日にTVで施設の様子を見た「老健リハビリよこはま」から利用者全員を受け入れるとの電話があり、同月19日には利用者229名が横浜の施設に避難、全国の施設に二次分散避難がおこなわれたそうです。その後、復興工事などを経て、今年4月、約7年ぶりに特別養護老人ホーム梅の香は再開を遂げました。

しかし、施設が再開した後も、梅の香を含む相馬地区の介護には、多くの課題が残っているそうです。
ひとつは、外部委託事業者の確保です。職員のみでの施設運営は難しく、震災以前から給食や清掃などの業務を外部に委託していましたが、震災後は業者が撤退し、新たな委託先の確保が必要となっています。
二つ目の問題は、安全な避難方法の確立です。現在の特別養護老人ホームの利用者の要介護度は平均が4以上であり、中には寝たきりの利用者もいるため、通常の大型バスなどでの避難は極めて困難です。福島県内と、県外東北6県の特養では、原発事故や火山の爆発が発生した場合の受入協定が結ばれていますが、老健やグループホームではそのような受け入れ態勢が整っていない状況だといいます。
そして、震災後最も深刻な課題となっているのが、介護人材の不足です。原発事故の影響で、約3割の職員が退職、その後も職員数が戻ることはなく、介護従事者は減少する一方。県外から職を求めてやってくる人もいますが、介護経験がほぼないため、すぐに離職してしまう人がほとんどだそうです。
また、人材不足が主な原因となり、施設の利用待機者の増加も深刻となっています。避難生活の中で、身体機能低下や認知症が加速し、増え続ける要介護者。それに対し、どのように人材を確保し、離職者を減らしていくかが、かなり重要な課題だと大内さんは語ってくれました。

今回のお話の中で最も強く感じたのは、介護従事者不足の深刻さです。当合宿で訪問したどの施設でも同じ問題を抱えていましたが、この問題は福島に限らず、少子高齢化が進む日本全国において共通した課題だと思います。南相馬福祉会では、その対応として、ハローワークや就職マッチングへの参加、報奨金制度をとりいれるなど、さまざま施策が行われていました。
あらゆる業界で、就業時間や福利厚生面などの「働き方改革」が広まりつつある日本ですが、介護従事者の働き方をどのようにして、より魅力的に変えていくかが今後の日本において非常に重要だと強く感じました。

3年 川添理子