令和2年5月28日

 本日は元毎日新聞論説委員で、現在は障害にかかわる様々な活動をしていらっしゃる野澤和弘様にお話をしていただきました。野澤様は現在、知的障害者の方々向けにわかりやすく情報提供する「NPO法人スローコミュニケ―ション」や障害者支援のための「千葉県NPO法人ちらく」等で活動なさっています。中でも印象に残ったお話とそれについての私の感想を2つ述べさせていただきます。
 1つ目は、千葉県の障害者差別禁止条例の制定までの過程についてです。大変な苦労があったことをお話していただきました。「障害者同士、障害者と中小企業の社長や県職員が話し合う中で、双方が相手の苦労を理解することができず自分たちの権利についてばかり主張していたが、本気で議論するうちにやっと相手のことを理解することができた。」とおっしゃっていました。私自身、自分が発言したいときは相手の話も聞かず主張することが何度もありました。「自分のことを理解してほしいなら相手のことをまず理解する」という言葉を忘れずに、まず相手の話に耳を傾けていこうと思います。
また、この条例制定までの過程では千葉県の女性知事とある厚生労働省の官僚の方が尽力したということもお聞きしました。私は厚労省官僚を志望していますが、官僚個人にできることは少ないのではないか日々悩んでいました。しかし、野澤様のお話を聞いているうちに情熱さえあれば、自分の想いを体現することはできると考えられるようになり、この悩みが吹っ切れたように感じています。
 2つ目は、障害者の権利擁護についてです。日本は西洋諸国と比べても障害者の権利の保護が十分でないということについてお話していただきました。例えば知的障害者の多くの方が、個人としての生き方が尊重されず、精神病院や施設に集団で入所しているという現状があるそうです。いわば幸福追求権が侵害されている状態であるように感じました。
 また、野澤様がお書きにもなった水戸アカス事件(1996年12月23日毎日新聞)では、障害者を多く雇用している地元では優良企業と認識されていた企業内で、障害者に対して(性的)虐待、賃金搾取が行われていました。この事件では、障害者に対する虐待等があっても警察や検察がその調査や起訴を快く引き受けなかったり、その虐待をされた障害者の父母ですらその記事の公開を拒んだりしていたそうです。また、新聞社内でもこの記事の公開については反対されていたそうです。しかし、組織の同調圧力に負けず社会正義を貫くという想いのもと野澤様は記事にしたそうです。この記事をきっかけに、これ以外の障害者に対する虐待がたくさん明るみになり、多くの方が告発できるようになったとお聞きしました。このお話を聞いてマスメディアならではの「真実の公表・周知」という役割の重要性に改めて気づくことができました。

 最後になりますが、お忙しい中貴重なお話をしていただいた野澤様に心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

4年 菅原太一