令和3年6月17日

 先日のゼミでは千葉県の中核地域生活支援センター「長生ひなた」で所長としてご活躍されている渋沢茂様と、いちはら生活相談サポートセンターのセンター長・主任相談支援員である大戸優子様にご講演いただきました。
渋沢様、大戸様ともにソーシャルワーカーとして支援活動をされており、支援事業内容に加えコロナで受けた様々な影響についてお話を伺うことができ、大変貴重なお時間をいただきました。
以下講演内容の概要と私の感想を述べさせていただきます。

 はじめに渋沢様の支援活動についてです。中核地域生活支援センターとは千葉県単独の事業です。支援の制度体制が高齢者、児童、障害者などで独立していることに問題意識を抱き、それらを総括的に24時間365日体制で対応することができる事業を作ろうと考え、現在のセンター事業が設立されました。
支援センターでの事業内容は「包括的相談支援事業」などの四つの事業が柱としてなされていますが、地域中核センターでは達成目標や権限、規制などの「枠」がなく、他の相談事業に比べて支援の幅が非常に広いことが特徴です。支援を必要としている人と関係を築き「つながり続け」て共に人生を歩んでいく姿に非常に感銘を受けました。
コロナ禍では働く人々に対しても自粛が求められ、支援者が困っている人の声をキャッチしにくいことが非常に困難なことでした。しかし、行動が制限されている中でも関わりをなんとか継続するために手紙やSNS等を利用し、感染予防を十分にした上であえて個別訪問に行くなど個別支援を続けており、中核支援センターの人々の「断らない。まず動く」という信念を強く感じました。

 続いて大戸様のご講演について述べさせていただきます。生活困窮者支援は社会保険制度と最後のセーフティーネットである生活保護の間にあり、生活困窮者自立支援法に基づき行われています。
 生活困窮者支援では①生活困窮者の尊厳の保持②就労の状況。心身の状況、地域社会からの孤立といった生活困窮者の状況に応じた、包括的、早期的な支援③生活困窮者支援を通じた地域共生社会の実現に向けた地域づくりの3点を重要な理念として掲げ活動されており、相談支援や学習支援事業など多岐にわたる事業がなされています。
 昨年度は、休業による減収などの経済的ダメージや、社会教育施設や福祉施設の利用制限による居場所の喪失などの問題が多発、これまでと比べて相談数は約4から5倍ほどに急増し、コロナは支援センターに大きな影響を与えました。
前例のない激増状態となった支援者を抱える中で一人一人に丁寧対応する余裕がなく、やってあげたい支援を思うように提供できないことへの葛藤があった中で適切な支援を行えるように環境の整備や人員体制の強化など様々な工夫がされていました。現場が非常に疲弊している中でも支援を求めている方のために、試行錯誤しながら必死に取り組まれていることを感じました。
コロナ禍では相談者の傾向に変化があり、「誰もが困窮者になり得る」ということの現実を突きつけられた経験になったそうです。
 今後は現在の生活困窮者自立支援制度に欠如している部分について再考することや、自殺者の急増に歯止めをかけること、また働き方の多様性に対応していくための対策など、多くの課題が浮き彫りになったことを受け、どのように解決していくべきか考えていくことが求められるとされています。
 
人とのつながりが何よりも重要とされる支援活動の中で、直接関わることが容易ではなくなってしまったコロナの影響は非常に大きなものであったと講演を通じて実感しました。またそのような状況の中で、決して「できない」という言葉を出すことなく、「今できる最大限のことは何か」と日々考え、前向きに、全力で支援に取り組む姿勢に大変感銘を受け、改めてソーシャルワーカーの皆様の存在の大きさを感じました。
 今後、社会の課題解決に向けて「地域づくり」が重視されていく中で、私たち自身が支援者の方々とともにできることはどのようなことなのかについて改めて考えていくべきだと強く感じました。

 改めて大変お忙しい中、貴重なお話をしてくださった渋沢様そして大戸様に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

3年 下井琴響