令和3年11月4日

本日のゼミでは、本ゼミOGで現在、厚生労働省年金局総務課の田中奈緒子様をお招きして、「年金制度について考える」というテーマでご講演をいただきました。私たちの生活に身近でありながら触れる機会の少ない貴重なお話を、私たち学生の社会生活に役立つようにお話をいただき、とても勉強になりました。いただいたお話を要約し、その中で私が印象に残ったことについて感想を述べさせていただきます。
田中様は年金制度の仕組みについて「三階建ての構造」というお話をされており、1・2階部分の公的年金が国民の老後生活の基本を支え、3階部分の企業年金・個人年金と合わせて老後生活の多様なニーズに対応しているとおっしゃっていました。また、年金ってそもそも必要なのかという疑問に対しても、ご説明をしていただきました。これを説明するにあたって、予測のできないリスクという言葉を強調していました。「何歳まで生きるの?」「老後いくら必要なの?」「家計の支え手が亡くなったら?」こうした予測ができないリスクに対しての一生涯の保険が公的年金であると、年金制度の必要性を教えてくださいました。
また、年金制度の現状についてもご説明してくださいました。年金財政は働く世代(現役世代)が負担する保険料をその時代に年金を受け取っている高齢者に支払う仕組みであり、この仕組みを賦課方式といいます。このメリットはインフレや給付水準の変化に対応しやすいことや、運用悪化によるリスクが少ないということがあげられます。この方式でまず生じる疑問が、高齢化が進む日本においては若い人が減る将来、年金額は減っていくのではないかということです。これに対しては、積立金から得られる財源で賄う見込みです。過去の世代で形成された積立金が将来世代の年金給付にあたって活用されるという仕組みです。
しかし、少子高齢化が進むと、長生きする人口が増えることと働く人口が減ること、の両方から年金財政はマイナスの影響を受けそのバランスは崩れてしまいます。それを抑えるためにマクロ経済スライドという調整の仕組みが存在することを教えてくださいました。これは人口動態の変化に合わせて支払われる年金額が増えすぎないよう、自動調整する仕組みです。この仕組みは働く人口減少にも対応するため、誰もがより働きやすい環境を作ることで保険料収入も増やすことができるようになります。日本経済の規模自体が拡大すれば、年金給付に使える金額も大きくなるというサイクルが存在するとおっしゃられていました。

今回の講演を通じて、年金制度という身近な制度にも関わらず知らないことばかりであることに驚きました。まさに現役世代である私たちの世代はこれから大きな問題に直面する可能性もあるのであり、にも関わらず制度への関心は薄いという現状を考え、年金制度を自分事として捉えていくことは必要であると感じました。

最後になりましたが、大変お忙しい中、お時間をいただき、ご講演をいただいた田中様には心から感謝を申し上げます。ありがとうございました。

3年 村山 浩暉