格付投資情報センター(R&I)にて特別編集委員を務めていらっしゃる永森秀和氏をお招きし、これからの日本における年金制度の在り方についてご講演いただきました。以下、講演のレポートです。
日本の年金制度は公的年金がメジャーで、「皆年金制度」のもとに充実した年金制度を享受しているように思えます。しかしながら、世界的に見れば日本の年金指数は低く、その理由として他国では私的年金が発達していることが挙げられます。シンガポールのように公的年金の存在しない国もあり、国際的な年金の評価は公的年金だけでは語れないというのが現状です。
また、これからの日本の人口構造の変化や社会保障の在り方を考慮したとき、現在普及している年金制度の持続可能性を高めるとともに、医療や介護などの年金以外の社会保障分野に力を入れるためにも、中堅サラリーマンなどの中高所得者層の自助努力の選択肢を増やす、すなわち私的年金等の質量を拡大していく必要があります。厚生労働省は老後所得について、高所得者は企業年金や個人年金で賄い、低所得者に対しては福祉的給付で年金を確保するなど、それぞれの立場に応じたイメージを描いています。
私的年金は大きく企業年金と個人年金に分けられます。企業年金においては、従来型の確定給付企業年金から、給付水準を約束しない確定拠出年金へとシフトしていますが、依然として従来型を使い続けている安定した大企業があるのも事実です。人手不足への対応など、経営戦略の一つとしての側面も企業年金はもっています。そして、確定拠出の個人年金が、俗にiDeCoと呼ばれるものです。企業年金の無い中小企業の従業員の年金を確保したり、節税ができたりなどの利点もありますが、「投資より貯蓄」のツールとして用いられ、節税メリットだけを享受する利用者が多いという現状があります。
老後所得の確保を図る手段は年金制度にとどまらず、NISAや積立NISAなどの非課税制度も急増しています。他にも、トンチン年金保険という長生きした人が利益をすべて享受する年金が登場するなど、私たちは老後の生活費の確保について多数の選択肢が与えられています。拡大する選択肢の中から、自らのライフスタイルに合わせた年金その他の制度を選ぶ必要があります。
この度はお忙しい中、このような貴重なお話を頂けたことに感謝いたします。本当にありがとうございました。

3年 髙相莉菜