令和2年7月16日

 本日は母子生活支援施設「国府台母子ホーム」の施設長である、川口学様にお話を伺いました。
 母子生活支援施設は、児童福祉支援施設の中で唯一母子が一緒に生活できる施設であり、「家庭そのものを支援する社会福祉施設」であるといえます。実際は母子に限らず、叔母と姪、姉妹等の関係でも入所することが可能です。現在は、30世帯80名が国府台母子ホームで生活しています。

 入居される方には様々な事情があります。例えば、金銭的な援助が必要な場合、親子双方に障害がある場合、外国籍のため日本で生活していくことが難しい場合などです。様々な事情の中で最も多いのがDVからの避難であり、全体の85%を占めています。この場合、施設はシェルター的な役割を果たすことになるため、県外から入居される方もいらっしゃいます。
 
 具体的に支援を行う上で心掛けていることは、きめ細やかなサポートにより「当たり前の生活を保護する」ということです。例えば、高校受験を目前にしている入所者を親の都合のみによって施設移動させることは、「当たり前の生活の保護」とはいえません。なるべく子供に負担をかけないような支援の形を常に模索しているとおっしゃっていました。それ以外にも、病院に同行する、家計の管理を手伝う、進路指導をする、等の支援をされています。入所期間は人それぞれですが、期間にこだわらず、その人にとって「真の自立とは何か」、を考えることが大切です。役所とも相談しながら真の自立をサポートします。退所後も仕事や学校をそのまま変えずに、その地域の住民として生活することを目標にすることで、その先の生活が続けやすくなるそうです。
 
 またこれからの課題として、母子支援施設の認知度向上についてお話しされていました。今現在入居されている方の多くが、DVによる被害を通報したのちに警察に保護され、子ども家庭福祉課の勧めによって施設にいらっしゃった方々です。母子支援施設に関する知識があれば、警察に保護される前に自ら施設に助けを求めることが可能になるため、施設の認知度向上は重要な問題なのです。

 そのため、まずは地域と関わりを持つために、学童保育や一時支援、ショートステイ等、多様な支援の形をスタートさせたり、福祉事務所にパンフレットを送付したり、といった対策を行っているそうです。ホームページ上に施設の情報をのせる方法もありますが、シェルターとしての施設の役割を考えた場合、施設の位置情報を掲載するというのはリスクを伴います。とはいえ、最も必要としている母子に支援の手を届けられる方法は何かと考え、ホームページに掲載するという決断をされたそうです。この課題については、警察や行政とのネットワーク強化が求められるとともに、支援の程度の異なる支援施設同士のネットワークがとても大切です。また、私たち市民一人ひとりが正しい知識を持つことで解決できる面もあります。いつでも、だれでもこういった施設が必要になる場合があるからこそ、決して他人事にせずに、自分事として考えることを心がけていきたいと思いました。

 最後になりましたが、大変お忙しい中、貴重なお時間を割いてお話をしてくださった川口様に心より感謝申し上げます。本当にありがとうございました。

 4年 吉福晴菜