令和4年5月15日

本日のゼミでは、認定NPO法人の自立生活サポートセンター・もやい理事長である大西連様をお招きして、「コロナ下での支援から見えた現代の貧困とその支援」というテーマでご講演いただきました。コロナウイルスの影響は世界全土にわたって深刻な問題となっていますが、その中でも急激に増加した自殺者の問題や、コロナウイルスの影響によって福祉的問題が顕在化し、生活困窮者となった人々が抱える問題についてお話しいただき、実はこれらの問題が身近に起きていることを再認識いたしました。ご講演いただいた内容を要約し、その中で私が感じたことを述べさせていただきます。
まず初めに、「30年間で約84万人」、「26.3分に1人」という衝撃的な数字を示したうえで、日本における自殺者数の推移、自殺の原因についてご説明いただきました。自殺に至る理由が経済・生活問題である場合が全体の2割を占めており、さらにその中には平均して4つの背景があるとおっしゃっていました。そして大西様は、こうした複数の背景を抱えている個人に対し、それを一つでも多く解決し、孤立状態を脱することが重要であることを強調されていました。コロナ禍で特に私たち大学生を含めた若年層や女性を中心に自殺者が増えており、私たちにとっても身近な問題です。まずは相談できる場所を知り、それを教えてあげることだけでも十分に孤立の解消につながることを教えてくださいました。
次に、現状私たち大学生の2人に1人が利用している大学奨学金について、奨学金を借りている大学生の数や平均借入額など具体的な数値を交えてお話しいただきました。まず、大学の授業料が年々増加傾向にある背景として、一般世帯の世帯収入が増加していることを挙げられ、そのため国が世帯に対して自己負担をさせる傾向にある、ということをご説明いただきました。さらに、生活保護世帯の大学進学率は一般世帯に大きく後れをとっており、貧困の連鎖の防止の観点から対策の必要性についても言及していました。「計算上、消費税を1.2%増税することにより大学教育を無償化できる」という大西様の提言にはゼミ生一同大いに考えさせられたと思います。私自身、当事者の問題としてこの問題に向き合うべきだと感じました。
最後に、NPO法人もやいで世克困窮者支援に当たる大西様が、実際に感じたコロナによる社会への影響についてお話していただきました。特に2020年2月から3月にかけて支援相談が増加し、その具体的な相談内容についても詳細に説明していただきました。
相談支援を求める生活困窮層は、コロナ前には見えなかった潜在的な問題を何かしら抱えていたと大西様はおっしゃっていました。というのも、もともと不安定な就労状況であったり、家庭内にDVや虐待があったりしても、景気が安定しており経済的に自立できてしまっていた、という具合です。こうした見えづらい福祉的課題をいかに景気回復時にクリアできるか、ということを今後の課題として挙げておられました。また、生活困窮層に対し、社会の中に「生活不安層」が拡大したことも強調されていました。生活不安層とは、要保護状態まではいかないまでも、収入が減少したり職業の性質上、十分に業務ができなくなったりしたために、「現状の生活が維持できなくなることに不安を感じている世帯層」であると大西様は定義しています。私自身、「働いている=貧困じゃない」という固定観念があったことに気づかされ、構造的な生きづらさを感じる現在の日本のセーフティネットの見直し、さらには社会連帯の必要性を強く感じました。
今回のご講演を終えて、私たち一人一人が社会の一員としてどういう社会を望むか、その方向性を見据えることが大切であることを学びました。法学部で社会保障法を学ぶ私たちゼミ生にとって、社会にある問題を把握し、その解決策を模索することは使命であると感じています。例えば、今回の講演の後、すぐさまボランティア活動への参加を志願したゼミ生もいます。常に社会を変えるために何ができるか、どう変わるべきか、考え続けていこうと思います。
最後になりましたが、大変お忙しい中大学まで足を運んでくださり、ご講演いただいた大西様には心から感謝申し上げます。ありがとうございました。

3年 間根山 晴基