令和4年5月23日

社会福祉法人「拓く」理事長の馬場篤子さんのご案内のもと、福岡県久留米市で活動する「久留米10万人女子会」、「本業+αプロジェクト」、「じじっか」を訪問させていただきました。以下、それぞれの内容と私の所感を述べさせていただきます。

 

〇久留米市10万人女子会

代表理事の國武ゆかりさん、理事の信國奈美華さんにお話しを伺いました。久留米10万人女子会は、社会から疎外させられてきた女性たちが気軽にゆるやかに繋がれるネットワーク作りの場、夢を実現できる一歩となる場を提供しよう」という想いで設立されました。現在では、女性だけでなく地域で孤立・孤独を感じているすべての人に事業領域を拡大しています。最近では、使われるだけの市民団体から法人格を持った責任あるものにしたいという想いから法人格を取得したそうです。

主な事業はラボ会事業と地域暮らし研究イベントです。ラボ会は自分たちの住むエリアで開催しているおしゃべり会です。現在は21の場所で開催されており、家族以外でのつながりができることで悩みなどを相談できる居場所になっています。地域暮らし研究事業は、ラボ会の中で参加者の案や希望、課題にみんなで取り組むきっかけ作りやサポートを行っています。2021年には、おしゃべりラボ会の移動販売がスタートし、高齢化が進みや買い物場がない団地に出店しました。徐々に買い物に来てくださる方やおしゃべりしに来てくださる方が増えているそうです。そのほかにも、婚活企画などの様々な企画を通して、別の地区のラボ会同士の顔の見える関係や繋がりの拡大につながりました。今年度は、「地域を知ること・地域の人たちを知ること」を目標に人とのつながりや顔の見える関係性の構築に向けて、課題の中から自分たちの楽しいことを見出し、そこからアプローチしていくことに尽力するそうです。ただ地域の中に存在するのではなく、地域の中で「暮らす」まちをつくること、私のことは「私たちのこと」とはどういうことなのか問い続けながらこれからも活動していくとのことでした。

10万人女子会の活動に参加される方はもちろん現在参加していない方でも自分の居場所が地域にあること、いつでも参加できる環境にあることは生活するなかで大きな力になると思います。また、地域の課題に取り組むために新しいことにも積極的に取り組んでいらっしゃるので、個人だけでなく地域全体に良い効果をもたらす素晴らしい活動だと感じました。9月には、障害者の方についてのシンポジウムと映画上映を行うそうです。支える側が言える場、気づく場にしたいとおっしゃっていました。私が最近関心のあるヤングケアラーの問題の解決策にもつながるのではないかと感じました。

 

〇本業+αプロジェクト

本業+αプロジェクトとは、「私たちのできる+αを探そう」を合言葉に、本業と地域に優しい創意工夫(+α)の実施を通して「地域で見守り育てる社会」を目指すことを目的とした地域密着型の商店・事業者を中心とする市民団体です。この団体は、みんなのサロンSORAの村谷純子さんが中心となって、久留米市内の20以上の店の協力のもと日々の生活のなかで活動しています。地域と人との関わりは今までは多くの場所で生まれていましたが、最近では顔の見える関係性が減ってきています。店は必ず暮らしの中で密着しており、そういった入口の中から何かしてもらう側からする側へ変化しているところが本業+αプロジェクトの特徴です。コロナ禍で多くの公的施設が利用できなくなるなか、本業+αの活動を続けたそうです。行政に頼らなくても自分たちで解決できるコミュニティが色々なところでできることで、公民館のような機能が至る所にあるような状況を創り出すことが出来ているとこれまでの3年間の活動を通して感じているそうです。課題としては、+αの活動をすることで社会性は向上するのに対し、本業の経済性は停滞するかもしれないという問題で、両者のバランスを如何にするべきなのかということでした。菊池先生は、横のつながりの中でのネットワークや役割、そこでの達成感などでそれぞれの役割があるという形になると別のやりがいを感じられるかもしれないし、何かのためにやらないといけないという目的ばかりが先行してしまうといけないとおっしゃっていました。

既存の環境の中から新たな関係性をつくる本業+αの活動がより多くの地域に広がればいいなと感じました。みんなのサロンSORAさんのような中心となって活動してくださるかたが他の地域にもいればいいのですが、そういうわけではないと思います。とはいえ、行政の側から+αの活動を直接依頼するのは難しいはずです。活動をしている店の積極的な評価や活動の啓発が事業展開の一つの解決策になるのではないかと感じました。

 

〇じじっか

じじっかは「実家よりも実家みたいな場所」として、150家庭を超える方々と暮らしの活動を行っている団体です。元々はひとり親家庭の市民団体からスタートしましたが、今では年齢も性別も立場も場所も関係なく相互扶助事業を展開しています。100人の貧困家庭の脱出とひとり親ふたり親ではなく7人親を目指して暮らしの悪循環を断ち切るという二つを目標にフードバンクや親子食堂、洋服などのリサイクルや親子で楽しめるイベントなど様々な活動をしています。また、2021年からは「じじっかファミリー」というラッキーループを巻き起こす新たなプログラムをスタートさせました。このプログラムは、①各家族が行っている“コト”をみんなでシェアすることで体験を「プラス」していく活動、②みんなの使わないものや必要なくなったものを必要な人に届け暮らしの節約「マイナス」を作る活動、④資格、経験やスキルを持つ人たちが集結し、オーダーメイドショップの展開をするなど持っている力の掛け算「カケル」を起こす活動、④地域の企業から依頼いただいた仕事をシェア(ワル)し、運営費と副収入を稼ぐ活動の4つに分けられます。①では親子食堂や体験教室、定期開催映画館などの活動、②では食材や洋服、おもちゃや家電などの循環、③ではオーダーメイド服やお弁当注文、ハンドメイドアクセサリーなどの展開、④ではライティングやイベント企画などの活動を行っているそうです。

私たちがじじっかの施設を見学させていただいているときに、帰ってきた子供たちが「ただいま」と元気な声で施設に入ってきたのがとても印象に残っています。様々な活動を展開されていますが、何よりアットホームとはこのことかというほど皆さんが家族のような温かい雰囲気で驚きました。じじっかがあれば、ひとり親家庭に限らず多くの人にとって子供が育てやすい環境になるだけでなく、子供にとっても良い環境であると感じました。今年度は実際にじじっかの活動が家庭にどのくらい金銭的影響を与えているのかを専門家の方と調査するそうです。良い結果がでるのではないかと思います。

 

今回、たまたま福岡にいたため菊池先生に同行させていただきました。コロナ禍で現場に行くことが難しかったため菊池ゼミに入ってから初めての課外活動でしたが、久留米の訪問を通して現場の熱い思いを生で感じることができて本当に良かったです。私の身近な場所でこんなにも熱心に様々なことに取り組んでおられる方がいることにもとても刺激を受けました。今回協力してくださった方々に感謝申し上げます。貴重な経験をさせていただきまして誠にありがとうございました。

4年 廣瀬ゆず