文:3年 奥垣安珠

訪問日時:2023/06/20(火)14:15-15:30

合宿最後には、NPO法人 Jinの前代表を務めておられた川村様にお話を伺いました。

川村様からは震災後、高齢者の方や障害を持つ方と農業を通じて地域を盛り上げようと活動されてきた貴重なお話を伺うことができました。また、実際に栽培の現場を見学させていただきました。

川村様は震災前、デイサービス・リハビリ施設の運営を中心に活動されていました。そして、震災後は浪江に戻り野菜の栽培を始めました。震災後の野菜を栽培するにあたって、全ての野菜を2年ほどモニタリングし、線量の安全を確保し、一つずつ出荷制限を解除していったそうです。実際に出荷制限解除のために尽力された方のお話を聞いて、その大変さや苦労は計り知れないと感じました。そのような中、野菜の出荷の自粛を余儀なくされ、花卉栽培に切り替え、トルコギキョウの栽培を始めました。栽培にあたって、東京五輪のビクトリーブーケに使ってもらうことを目標にされたそうです。実際、東京五輪では被災地のそれぞれの県の花が選ばれました。ビクトリーブーケに育てた花が使われることに、感謝の気持ちと、「おかげさまでここまできました」と報告する気持ちを込めたそうで、復興に対する想いの強さを感じました。

また、「復興ごっこ」についてのお話が印象的でした。被災地に関わりたい、応援したいという気持ちだけではなく、被災地で実際に働いて自分の生活を成り立たせ、その先に地域や社会への貢献があるとおっしゃっていました。この言葉を聞いた際、ハッとさせられるものがありました。何かをしてあげている、良いことをしてあげているつもりにはなっているが、内容が伴っていないということはないだろうか、そんなことを改めて見つめ直したいと思いました。

活動を続ける中で、現在までに3組の浪江への移住者、10組の専業農家が浪江に誕生したと話してくださいました。知らない土地に移住することや、農業で生活をすると決めるには大きな覚悟がいると思います。しかしそれだけ浪江町や農業に魅せられた方がいらっしゃるのだと感じました。

全体を通して、農業を通じて、その農作物の産地にすることで、地域を盛り上げたいとの熱い想いが感じられました。震災後、野菜の出荷が難しくなるという困難な状況でも、地域のためにと新しい活動に取り組まれたことに、川村様たちの地域、復興への強い思いが伝わってきました。今後、より農業、そして浪江の魅力に気づく人が増え、活気のあるものになってほしいと思います。川村様、貴重なお話をありがとうございました。