令和5年10月12日

 

本日のゼミでは、現在健康局総務課長としてご活躍されており、長年日本の年金制度を支えていらした厚生労働省幹部の岡部史哉(おかべふみや)様にお越しいただき、「年金の制度と理論―制度のデザインを中心に―」というテーマでご講演いただきました。

 

Ⅰ 年金制度の方向性を決める政治的構造や、Ⅱ 年金制度における「公平性」・「納得性」・「透明性」の重要性、またⅢ 公的年金制度の根拠や、Ⅳ 一階建て年金と二階建等の年金制度におけるデザイン、そしてⅥ 「世代間不公平」論に端を発する財源拠出方式の議論などについてのお話をお伺いすることができました。

 

我々の生活に大きな影響を与える年金制度のお話を、文献等を交え、詳しくご説明いただき、とても勉強になりました。

 

中でも私が印象に残ったのは、「遺族年金において所得調査を行うべきか」という問題です。ちょうど、私が現在行っている判例研究が遺族補償年金請求に関するもので、「性別による区別か所得制限か」という問題には頭を悩ませました。しかし、岡部先生の講義を拝聴し、制度のシンプルさこそ保険の目的の達成に有効という知見を得ることができました。また、講演後のゼミ生からの質問で、「シンプル化した保険制度の補間としてきめ細かい福祉制度が必要なのではないか」という指摘もあり、これからの社会保障研究の手掛かりになりそうな議論を聞くこともできました。

 

これからの人生に深く関わっていく年金について学べたことは、我々にとって大変為になる貴重な機会でした。特にゼミ生の中には公務員を志す者、社会保障関係の職種を志望する者が大変多いため、現在の制度設計だけでなく、今後の制度変更の可能性等のお話もお伺いでき、これからの年金制度を担う、変えていく者として良い刺激となりました。

 

改めまして、この度はご多用のところご足労くださり、ありがとうございました。

 

文 山田 えりさ