令和6年6月24日
感想
3年 武石侑里子

福島原発被災地研修の前泊二日目には、東京電力廃炉資料館に訪問し、職員の方にガイドをしていただきながら福島第一原子力発電所の事故発生時の様子や廃炉事業の現状について学んだ。
この資料館の最大の特徴は、原発事故への責任がある東京電力ホールディングスが運営しているという点であり、最初に見た映像は原発事故の反省とお詫びの言葉から始まった。前日に訪問したいわき震災伝承みらい館では、震災による被害の様子や防災に関する展示がされており、施設名のとおり震災による教訓を「みらい」に伝える役割があると感じたが、東京電力廃炉資料館は、東京電力ホールディングスが原発事故や廃炉作業の展示をすることで原発事故についての説明責任を果たし、廃炉作業の透明性を確保するための一つのツールとしての一面がある資料館であるという印象を受けた。


2階の展示は主に原発事故についてであり、原発事故発生時の外側からの対応を説明する展示では、電源の状態の変化や消防車による消火活動の様子などが時系列に沿ってわかりやすくまとめてられていた。また、別の展示では、なぜ、震災当時稼働していなかった4号機が水素爆発を起こし、稼働中であった2号機が水素爆発を起こさなかったかについて、号機ごとに丁寧に説明していただき、事故についての理解を深めることができた。


1階の展示は主に廃炉事業についてであり、現在も4000人以上の方が作業に当たっていることやこれまでの作業の内容や今後の予定などを学んだ。なかでも印象的だったのは、ALPS処理水の海洋放出についての説明だ。トリチウムは処理をしても取り除くことはできないが、自然界に多く存在している放射性物質であること、処理水を700倍以上に希釈し、トリチウムの濃度をWHO飲料水基準の約7分の1未満にして放出していることなどのお話を聞くことができた。処理水の放出により中国が日本産水産物の輸入停止措置をとったというニュースが一時期話題になっており、私自身そのニュースを受けて処理水に対して少し不安があったが、科学的根拠に基づいた丁寧な説明を受けることで安心することが出来たと同時に、不確かな情報や周囲の反応を鵜呑みにして勝手なイメージを抱いてしまうことの危うさを感じた。


今回資料館を見学して感じたことは、「原発事故はまだ終わっていない」ということだ。原発内に残っているデブリは少なくとも880トンあり、取り除くには40年近くかかるという。にもかかわらず、廃炉作業がメディアで取り上げられる回数は少なくなってきており、国民の関心も薄れてきていると感じる。自然災害がいつどこで発生するか正確に予測をすることは困難であり、誰もが自然災害やそれによる影響であらゆる被害を受ける可能性があると考えると、国民全体が当事者意識を持って福島原発の現状に目を向けていく必要があるのではないだろうか。
余談ではあるが、資料館の建物の外見の印象と内部の印象にギャップがあったことも印象に残った。
原発事故や廃炉事業についてご丁寧に説明していただきました。改めまして、見学させていただきありがとうございました。