令和7年1月9日

感想

3年 栂井好文

 

本日のゼミでは、厚生労働事務次官の伊原和人様をお招きし、「今後の社会保障の課題と対応の可能性」というテーマでご講演いただきました。特に、社会保障が直面する課題に焦点を当てたお話を伺いました。

伊原様はまず、高齢者人口の増加に伴う財政問題と人手不足について説明されました。財政問題に関しては、今後85歳以上の人口増加率が年間5~6%に達すると予測され、それに伴い社会保障費も増大することが懸念されています。特に、基礎年金制度の持続可能性が危ぶまれ、早急な対策が求められるとのことでした。
また、人手不足の問題については、85歳以上の高齢者の60%以上が要介護状態となると推測され、在宅介護や入院の需要が急増すると指摘されました。一方で、15~64歳の生産年齢人口が減少するため、介護・医療分野における人材不足が長期的な課題となり、労働力の確保に向けた対策が必要であると述べられました。
こうした課題への対応策として、伊原様は以下の3つの対応策を上げられました。
第一に、外国人労働者の受け入れです。外国人労働者の積極的な受け入れにより、労働力不足の解消が期待されるだけでなく、彼らが日本で就労することで所得税や住民税を納め、年金や健康保険にも加入するため、社会保障制度の財源を支える役割を果たし、高齢化による財政負担の軽減が図られると考えられます。
第二に、地域共生社会の実現です。高齢化や人口減少が進む中で、地域・家庭・職場といった生活の基盤が弱まり、人々のつながりが希薄になっている現状があります。そのため、地域全体で支え合う仕組みを再構築し、誰もが役割を持ち、お互いを尊重し合いながら支え合うことで、支援を必要とする人々が孤立せずに安心して暮らせる社会を構築することが重要になってきます。
第三に、医療・介護分野における新たな産業の創出です。例えば、特別養護老人ホームや通所介護施設において、見守りセンサーや電子記録アプリを活用することで業務の効率化を図り、少ない人手でも適切なサービス提供が可能となるような取り組みが進められています。こうした技術の活用は、介護・医療業界における人材不足の課題に対する解決策の一助となり得ます。

今回の講演を通じて、日本の社会保障制度が直面する課題の深刻さと、それに対する多角的な解決策について改めて考えさせられました。特に、個人的には「地域共生社会の実現」の案が印象的でした。要介護状態となる高齢者の人口が増え、家族内での支え合いが減少する中で、地域全体で支え合う仕組みを構築することは、ひいては個人個人が役割を担うことでやりがい、生きがいを感じられるという点にもつながるということがとても印象的でした。

今後も社会全体でこれら問題にどのように取り組むべきか、引き続き関心を持ち続けていきたいと思います。

大変お忙しい中、早稲田大学で講演してくださった伊原様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。